ヒストリー
精度を追求し続けた50年間
Zygo Corporation研究開発エグゼクティブディレクター: Dr. Peter de Groot
「新しい社名を定める必要がある」とカール・ザノーニは言いました。「自分たちの名前やイニシャルではなく、コダックやゼロックスのように、短くて、外国語でも発音しやすい名前でなければならない。」ポール・フォーマンとカールはそれぞれ辞書を手に取り、ポールは前から、カールは後ろから探し始めました。カールは、ニューイングランドのウェズリアン大学と日本のキャノンという2つの主要投資家が代表する、学界と産業界の協力を象徴する「かけ橋」あるいは「リンク」を意味する「zygo」を見つけました。こうして、ポールとカール、ソル・ラウファーは、新しい会社の社名をみつけ、1970年6月23日にZygo Corporationとその商標であるZYGO®のロゴが誕生しました。
ZYGOは、コネチカット州ミドルタウン、ウェズリアン大学のキャンパス内に位置する、ハイストリートに面する家の2階にある3つの部屋で創業しました。1970年の最初の夏、ソルは毎日寝室のエアコンをポールのボルボのトランクに積み込み、昼間ハイストリートの家で使用した後、毎晩自宅に持ち帰るという生活を続けました。成功には継続的な拡大が必要となります。会社の設立からわずか3年後に、ZYGOの16人の社員は、隣町のミドルフィールドの心地よい田園地帯にある新しい1000平方フィートの施設に移転しました。現在、当社のミドルフィールドの敷地は160,000平方フィートで、その他、世界中に10のオフィスと製造拠点を持ち、500人以上の従業員が働いています。
ZYGOは、当時の最先端技術を遥かに超える光学部品を製造することを目的として設立されました。ポールの言葉通り、「私たちのビジョンは、私たちがする事すべてにおいて一番になることです。」 ZYGOの最初の主なプロジェクトの1つは、前例のない速度と精度で非球面レンズを製造するための装置でした。非球面ジェネレータには、エアベアリング、研削ホイールとワークの間の高剛性構造、革新的な閉ループコンピュータ制御が使用されていました。同機で生成された表面は非常に滑らかで、研磨されているものと見分けがつかないくらいでした。キヤノンのFD55 mm f/1.2 ALは、ZYGOの非球面ジェネレータを使用して、非球面レンズを採用した世界初の35mm一眼レフカメラレンズで、最大口径(f/1.2)においても鮮明な解像度を実現しました。
また、ZYGOの創設当時からの目標の1つは、最高精度の平面を製造するための世界クラスの光学製造施設を建設することでした。
ZYGOは、どこよりも高品質の光学部品を製造するメーカーとして設立されました。その伝統は、高エネルギーレーザー用のこれらの平面増幅器に受け継がれています。
1980年に、ZYGOはローレンス・リバモア国立研究所 (LLNL) から、NOVAレーザープロジェクト用の平面部品を製造する契約を締結しました。その製造能力は進化を続け、ZYGOは1997年に、ローレンス・リバモア国立研究所から、これまでに試みられた世界最大のレーザー核融合プロジェクトのための、ウィンドウやレーザー倍増結晶を含む数千メートル級の平面光学部品の契約を実現しました。その結果、1990年代に、ミドルフィールドのカスタム設計された機械と試験用施設を使用して、ZYGOの平面研磨能力が大幅に拡大されることになりました。今日、ZYGOは世界で最も強力なレーザー用の高フルエンス光学部品の最大手サプライヤーです。
ZYGOが製造ラインとして光学部品をテストするための最初の実用的なレーザーフィゾー干渉計を発表したのは、同社の設立から間もなくのことでした。1972年12月6日に発行された「干渉計システムモデルGH」のパンフレットには、交換可能な参照平面原器、すばやく簡単なセットアップ、同時観察ビューと同時撮影、制約のないテスト用ワークスペースなど、この製品に固有の操作機能に関する説明が記載されています。このシステムは、「コーティング済みおよび未コーティングの光学部品、表面、およびシステムに必要なほぼすべての測定を実行できます。」とあります。
1977年、ZYGOは、ビデオモニター上に表示された、或いはPolaroid®プリントに表示された干渉縞を、定量的なインターフェログラムデータとして換算する初の市販品として、ZIPP (ZYGO干渉縞プロセッサ) を発表しました。
1989年までにMark-IV レーザーフィゾー干渉計は完全に自動化され、データの取得と分析をHP-WindowsベースのMetroPro™ソフトウェアにてコンピュータ制御できるようにしました。レーザー干渉計の製品ラインは進化と成長を続け、GPI™および Verifire™ 非球面用プラットフォームの導入によって、10mmから800mmの口径をカバーできる光学テストにおけるゴールドスタンダードとしてのZYGOを確立しました。
1980年代に、ZYGOは、半導体製造用のフォトリソグラフィ装置に使用する、要求の厳しいステージ位置決めのアプリケーションに取り組むことを決定しました。その基礎となる技術は、アッベのオフセット誤差をほぼ排除しつつ高精度を維持できる重要な利点を備えたヘテロダイン見通し線レーザー干渉法です。戦略的パートナーと提携して、ZYGOは最初のAxiom 2/20を発表し、最先端のフォトリソグラフィシステムに統合される測定システムの大手サプライヤーとなりました。
ZYGOが製造する最新のZMI製品ラインにおいては、安定化レーザーと独自の音響光学結晶変調器、直線変位、傾斜、先端角度を同時にモニタリングするための複雑な光学系、毎秒数メートルの速度とナノメートルの精度でレティクルとウエハーステージをモニタリングできる高速電子機器などに、この遺産が引き継がれています。
1990年代の前半は、干渉顕微鏡の開発におけるエキサイティングな時期でした。干渉顕微鏡は長い間、滑らかな光学表面や研磨された金属表面向けの非常に限定的なアプリケーションとみなされていましたが、白色光顕微鏡を用いた新しい手法がこれらの制約から解放し、ほぼあらゆるタイプの表面の測定が可能になりました。ZYGOの最初のコヒーレンススキャンシステム、NewView™ 100は、機械加工された表面、研磨された表面、高度にテクスチャ化された表面、超研磨加工された表面などを高速かつ高精度で測定可能でした。ZYGOは2000年代の初めまでに、自動車部品への高精度非接触干渉法の適用を開拓し、以前は精密機器には不適切と考えられていた製造環境での測定を可能とし、燃料効率を改善し、大気汚染を減らしました。製品ラインは拡大し続け、現在、半導体製造や精密機械加工などの市場を対象に、ZYGOの光学プロファイラが世界中に数千台設置されています。
2003年、コーニングの有能な光学設計者と開発エンジニアのグループがZYGOに加わり、現在、カリフォルニア州アーバインを拠点とする電子光学 (E-O) グループを形成しています。E-Oグループのプロジェクトの歴史には、初のレーザーベース角膜切断装置用のビームライン光学系、歯科用3次元イメージングシステム、非熱多色イメージングレンズが含まれます。E-Oグループは、もっとも初期の高性能複合現実 (Mixed Reality) システムであるフライトシミュレータアプリケーションで、現実世界の環境にコンピュータ生成された風景をオーバーレイする、高度なヘルメットマウントディスプレイ (AHMD) を開発しました。これらの業績に加え、ZYGOのE-Oグループは現在、コンパクトな地球画像衛星用望遠鏡の最大手サプライヤーでもあります。
会社設立後の進展は、常に上り調子だったわけではありません。2000年代初頭に、ZYGOはTeraOptix®部門を立ち上げることで、多くのハイテク企業と同様、通信ブームに乗りました。すぐに株価は高騰し、収益性と成長に限りはないように見えました。もちろん、バブルは崩壊し、全員が総力を挙げて再編成と回復に取り組みました。フロントエンドの半導体ウエハー測定を目指したもう1つの決断は、この分野の資本設備投資が急減速した2008年の世界的な金融危機に直面し、ZYGOはこの大胆な決断を控えめなOEMビジネスに縮小しました。これらの挫折は、復元力のある会社を築くための貴重な教訓となりました。
2010年以降、ZYGOがサービスを提供する市場が新たな機会によって活性化し、製品ラインを強化し拡大する時期となりました。業界標準のZYGO MetroPro™ソフトウェアが完全に改訂され、すべての干渉計測製品に対応する新しいMx™プラットフォームにアップグレードされました。主力製品であるNexview™干渉顕微鏡は、3次元造形部品の表面や部分的に透明な薄膜層などの複雑な構造の測定に、光学非接触式の応用範囲を大幅に拡大しました。
ZYGOの光学プロファイラテクノロジーは、スマートフォンのカメラや新しいデジタルVR・ARディスプレイなどの消費者向けエレクトロニクス製品の小さな非球面を測定するための新しいCompass™システムの中核を構成しています。最新のレーザーフィゾーVerifire™ MST波長変調型干渉計は、複数の表面から構成される薄く透明なガラス表面を分離し、新しい光学テスト用プラットフォームは、ソフトウェアによる振動緩和と、CGHに基づく「シングルショット」ダイナミックデータ取得の両方を実現します。
ZYGOの超精密光学 (EPO) 部門は、カリフォルニア州リッチモンドの旧ASMLの資産を基に、2010年に設立されました。EPOは、リソグラフィ用のEUV投影レンズから、レーザー干渉計重力波観測所 (LIGO) 用のテストマスまで、世界で最も正確に作られた光学部品の一部を製造しています。
半導体フォトリソグラフィ業界における継続的なニーズにより、精密位置決めシステム(PPS) 部門は、2013年に半導体フォトリソグラフィシステムの乱気流問題を解決するために設計された、革新的な光ヘテロダインエンコーダに基づく新しい製品ラインを発表しました。ZYGOの新しいZPSファイバーベースの干渉法位置センサーは、10 pm/Hzのノイズレベルと1日あたり数ナノメートルのドリフトで、最大64チャンネルの絶対距離測定を実現し、リアルタイムのX線ビーム調整のための高度なシンクロトロン光源の補正光学系に使用されています。
創業者の引退後、ZYGOは次世代のリーダーシップに目を向け、未来を見据えて自らを位置づけるための時間となりました。2014年に、ZYGOはAMETEKの超精密テクノロジー部門に加わりました。UPT部門には、姉妹計測会社であるテーラーホブソン、ソーラトロン、ライカート、クレアフォームのほか、精密工学のリーダーであるプレシテック、スターリングウルトラプレシジョンとTMCも属しています。ZYGOは、AMETEKの新しい姉妹会社との互いに有益なコラボレーションを実現しながら、確かな伝統の上に新製品と革新を生み出すことで、当社の伝統を守り続けています。
設立当初からZYGOの事業計画は、産業における解決策のない重要なニーズに対して解決策を実現するという事を基盤としています。ソルの言葉では、「私たちにはそれが可能です。境界はなく、限界もありません。」これは、当社がアイデアから製品の発表まで新しいソリューションを実現できる、一流のエンジニアを含む有能な従業員を採用していることを意味します。特許文献には、ZYGOの取得済みの375件の米国特許に対する8,200件を超える引用例があります。科学ジャーナルや教科書、会議議事録には、ZYGOの従業員が執筆した何百もの論文、本の章、レビュー記事が掲載されています。ZYGOの科学者は、専門家団体、規格委員会、大学提携、および応用光学と精密製造分野における専門的な出版活動に積極的に取り組んでいます。
小さなスタートでしたが、今日では精密光学製造と干渉計測の分野で認められる会社へと成長を遂げました。ZYGOの名前は、表面の形状とテクスチャを測定する機器、また最先端技術を定義する光学コンポーネントとシステムの代名詞となっています。ZYGOは、国際市場と世界中の卓越した研究拠点の橋渡しをするというアイデアを守り続けています。同社の使命は、「革新的な精密光学と計測ソリューションを提供することによって、顧客の成功を可能にする」ことです。この精神は、私たちが今後の課題に目を向けている間も強く保たれています。50年経った今でも、まだ始まったばかりのように思えるのは素晴らしいことと感じます。